保育実習理論――音楽編4-2~調号の作り方

保育士試験

調号

 調号とは何かわかるでしょうか? 楽譜のト音記号の近くに書いてある#や♭で表されているものです。この#や♭の数で調性がわかります。具体的にはこんなやつですね。

 上がイ長調(もしくは嬰ヘ短調)、下が変ホ長調(もしくはハ短調)の調号です。イ長調や変ホ長調と言われてすぐに鍵盤上の音が思い浮かばない方が多いと思います。最初はゆっくりとでいいので、イ長調といわれたときの鍵盤を思い出しましょう。ここに示しておきますね。

 鍵盤に全音半音とはもう書いていませんが、ラ=イを先頭に全全半全全全半の並びになっていることを確認してくださいね。上記で(もしくは嬰へ短調)と述べたのには訳があります。嬰ヘ短調の鍵盤もみてみましょう。

 まずは、きちんとファ#=嬰へから全半全全半全全の並びになっているかを確認してくださいね。きちんとそのようになっています。
 そして次は、イ長調の鍵盤と見比べてみてください。何回か見ていただくと気づかれた方もいるかと思います。この鍵盤上ではオクターブ違うところがありますが、使っている音が一緒なのです。音名(鍵盤の音)で申し上げれば、イ長調は ラシド#レミファ#ソ#ラ であり、嬰へ短調は ファ#ソ#ラシド#レミファ# です。順番が違いますが使っている音が同じです。このため、先ほど()で、もしくはと説明いたしました。
 楽譜上、調号は二つの調を示す可能性があります。前回の記事でもハ長調とイ短調の話を持ち出しましたが、この二つも調号が何もつかないという点で、今回の例と同じです。

 しかし

 保育士試験で出題されるのは、今のところ長調のみのようです。

ということで、長調のみ理解していれば試験では大丈夫ということでしょう(長短調は両方理解している方が良いと個人的に思いますが……)。それに、調号が同じ調(専門的には平行調といいます)であれば、長2度上に移調しようが、短3度下に移調しようが、調号的には同じになるので安心ですね。

語呂合わせで調号を暗記してしまおうという力技もあるようですが、理論を理解してしまえば、そんなゴリ押しは必要ありません。筆者もシャープやフラットの数を暗記していませんので、パッと出されて、即座に答えることはできません。それでも試験問題に正解できます。今までの、度数や移調、鍵盤の考え方を身につけていれば大丈夫です。具体的な練習問題を解きながら頑張りましょうね。

練習問題

それでは、練習問題に取り組みましょう。下記の楽譜は音楽編3で散々使ったものです。ここでも使いましょう。

とりあえず調号を見てみます。何も書かれていませんね。何も書かれていないということは、ハ長調(もしくはイ短調)ですね。示すまでも無いですが、鍵盤を確認しましょう。

このハ長調の楽譜を長2度上に移調してみましょう。まずは鍵盤から。全体を長2度上に動かします。おりゃー!!

さあどうでしょう。長2度あがりましたから、レから数えて、全全半全全全半のニ長調に変わりました。移動したところ、ファとドが半音上がりました。シャープです。ファとドにシャープがついた楽譜はニ長調(もしくはロ短調)です。楽譜の調号を確認しましょう。

 この手順でやれば、調号を暗記することなく問題を解くことができるでしょう。覚えているのが調号がないハ長調というだけの人も、大丈夫です。次は、ハ長調以外の調を題材に練習問題を解いてみましょう。

練習問題2

 実際の試験にも出されているような調号の問題です。自力で解いてみてくださいね。

 この楽譜を短3度下の調に移調したときの調を下記から答えなさい。

 ゆっくりでいいので、先ほどの手順で解いてみましょう。

 どうでしょうか? 答えがわかったでしょうか?

 解説とともに確認してみましょう。まずは、元の楽譜が何調なのかを確認しましょう。鍵盤を思い浮かべましょう。元の楽譜はファにシャープがついていますね。というわけで、ファにシャープのついた鍵盤を思い浮かべます。

 これは極端ですが、はじめのうちはこれでもいいのではないかと思います。慣れてくるとここまでしなくても頭の中で全全半全全全半のイメージが沸いてくると思いますので……。
 この●で示した鍵盤の中で全全半全全全半のならびを見つけます。半音の箇所を見つけるほうが早いかもしれませんね。半音関係なのは ファ#ーソ と シード の二つですね。そして、その前後を確認し、全全半の関係になっているのが ソラシド の箇所だとわかります。レミファ#ソだと最初は全全半ですが、後半が全全半全になってしまいます。したがって、ソからはじまるト長調だと判断できます。ソラシドレミファ#ソ ですね。鍵盤だとこうです。

 そして、これの全体を短3度下に、つまり左方向に動かします。短3度下とは鍵盤何個分でしたか? 3度の基本は長3度、ドーミの関係でしたね。短3度はそれより半音短い距離ですから、ドーミ♭の関係ですね。

 短3度はドを1とすると、ミ♭は4ですから、鍵盤4個分を動かせばいいことがわかりました。

 ト長調の鍵盤全体を鍵盤4個分左に動かします。おりゃー!!

 ト長調の鍵盤と見比べてみてください。全体が鍵盤4個分左に動いていますね。問題なく移調できました。
 さあ、移調がうまくいきましたので、鍵盤をみていきましょう。移調したため、#の数が変わっていますね。この鍵盤ですと、ファ、ソ、ド、レに#がついているようです。この時点で問題に答えることができますね。ド、レ、ファ、ソに#がついている選択肢は⑤です。何調か名前がわからなくても答えることができましたね。ただ、一応、移調先はホ長調ということは述べておきましょう。ミからはじまる全全半全全全半ですね。

 さて、この解き方がわかれば、調号問題には答えることができるでしょう。もう1問、すこし難易度を上げた問題を最後に解いてみましょう。

練習問題

 次の楽譜を完全4度上に移調したときの調号を選びなさい。

 調号の♭の数が多いですが、一つずつ考えれば解けるはずです。頑張りましょう。

 いかがでしょうか? 解けましたか?

 解説していきます。

 フラットが ラ、シ、レ、ミ についていますね。鍵盤を思い浮かべましょう。

 これも極端ですが、ここから全全半全全全半をさがします。半音関係なのは、ドーレ♭ と ソーラ♭のふたつですね。そして、全全半となりそうなのは、ラ♭シ♭ドレ♭のところとミ♭ファソラ♭ですね。ラ♭シ♭ドレの後半はミ♭ファソラ♭で、しっかりと全全全半となっていますので、ラ♭=変イ長調と判断できました。ミ♭ファソラ♭の後半はシ♭ドレ♭ミ♭なので、全全半全になってしまいますので、ちがいます。

 変イ長調とわかりましたので、わかりやすい鍵盤にします。

 ここから完全4度上に移調します。完全4度の基本は、ドーファの関係ですね。

 ドを1として、ファは6ですね。6個の鍵盤分右に動かせばいいことがわかりました。変イ長調の鍵盤を6つ分移動させます。おりゃー!!

 移調がうまくできたか確認してくださいね。これで問題が解けそうですね。レ♭、ミ♭、ソ♭、ラ♭、シ♭の5個に♭がつきそうです。ソラシレミにフラットがついている選択肢は②ですね。答えは②です。そして、念のため、移調先は変ニ長調です。

 ちなみに、この変ニ長調もそうなのですが、異名同音をおもいだしてください。フラットでなくてもシャープの調号で表現することも可能ということです。

 これは嬰ハ長調の調号です。ひとつづつ考えるとわかると思いますが、変ニ長調と鍵盤自体は同じです。ただ、ミ#を使うなど、すこし見づらい楽譜ですね。ただ、もし選択肢にこれがあったとしたら、これも正解と言えるのではないかと思います。さすがに保育士試験でここまでの難易度の問題はでないとおもいますが……。

 練習問題2が解けるようになれば、調号問題はほぼ完璧なのではないかと思います。調号を暗記してしまう方が楽という方もいるかもしれませんが、理論を覚えてしまえばそれを当てはめていくだけですので応用が効くのではないかと思います。ぜひ解けるようにしてくださいね。

まとめ

 覚えておくべきこと
・問題文の楽譜の調を考える(鍵盤を思い浮かべる)
・全体を指示通り(長2度など)に動かし、移調する
・#や♭の数を数え、選択肢と見比べて答えを導く
 この順番を守り、うまく移調させることができれば、調号問題は突破です!!

 楽典の本が一冊でもあると安心ですよ。筆者も高校生の頃この本で勉強した記憶があります。

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