図式期の具体的な表現方法
描画表現の発達過程に4歳ころから9歳ころの分類があり、それは図式期とよばれます。ある程度描きたいものが描けるようになる年齢ではありますが、見えるままに描くという段階ではなく、知っているように描くという段階です。それゆえ、独特な表現方法になります。この図式期などについて、発達段階を追った内容の記事は別に書きたいと思っています。
設問として
子どもたちのお絵かきについての設問がありました。絵画を見て、それがどのような表現なのかを選ぶ問題です。とりあえず実際に出題されたものと同じような問題をつくりましたので、みてみましょう。
次の【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。
【事例】H保育園の4歳児クラスで運動会の絵を描きました
A児の絵:大玉ころがしをしているところ。
B児の絵:トラックでダンスをしているところ。
C児の絵:リレーをしているところ。
【設問】絵の中にあらわれている描画の特徴として、適切な組み合わせをひとつ選びなさい
(組み合わせ)
A | B | C | |
1 | レントゲン表現 | 拡大表現 | 展開表現(転倒式描法) |
2 | 積み上げ表現 | 多視点表現 | レントゲン表現 |
3 | 拡大表現 | アニミズム的表現 | 多視点表現 |
4 | 拡大表現 | 展開表現(転倒式描法) | 積み上げ表現 |
5 | 多視点表現 | 展開表現(転倒式描法) | 積み上げ表現 |
まずは自力で解いてみてくださいね
表現について解説していきます。
拡大表現とは、自分の興味のあるものを大きく表現することです。ここでは大玉が大きく表現されていますね。この絵を描いた子にとって、大玉の存在はとても大きいものだったのだと想像されますね。拡大表現と似たものに誇張表現があります。おそらく意味はほとんど同じと考えて問題ないでしょう。
展開表現(転倒式描法)は、道の横の街路樹や、家が横に倒れているように描く表現です。今回で言えば、トラックでダンスをしている絵がこれにあたりますね。子どもが横たわっているように見えます。
積み上げ表現は、物の遠近をうまく表現できずに、まるで積み上がっているように描く表現です。こんかいのリレーの絵がこれにあたります。たしかに、奥行がわかりづらく、積み上がっているように見えますね。
というわけで、今回の正解は4番になります。
そのほかの表現について
レントゲン表現(透視表現)
レントゲン表現とは、家の中やバスの中など、見えないものを透けたように描くことです。上記の絵では家の中の人が描かれていますので、レントゲン表現です。
多視点表現(視点移動表現)
多視点表現とは、上から見た時や正面から見た時など、多視点から見たものを一緒に描くというものです。上記の絵では、横から見たコップと斜め上から見た飲み物の絵ですので、多視点表現がされていると言えます。
この多視点表現は、ピカソなどをはじめ、キュビズムの芸術家が使っていた技法ですよね。もしかしたら、子どもの絵からインスピレーションを受けて、キュビズムが発足したのかもしれないですね。これは勝手な憶測ですが……。
アニミズム的表現(擬人化表現)
アニミズム的表現とは、花や太陽、おもちゃなどを擬人化して描くということです。物や動物、植物に人間らしい顔が描かれている絵は、子どもの絵にはよくありそうですよね。
並列表現
並列表現は、基底線(画面下部の横の一直線)の上に、様々なものが並んでいるように描くことです。
まとめ
言葉の通りといえばそのままなのですが、こういった描画表現が乳児期、幼児期にみられます。この図式期は、基底線の登場が大きな特徴と言えると思います。下部に横一直線で表現されることが多いですが、画用紙の下端が基底線の役割をしている場合もあるそうです。
色々な表現が見られる図式期ですね。今回は視覚的にも分かるように、表現に合わせたイラストものせていますので、この表現はこういう特徴だなということがすぐに思い出せるようになれば、試験でも問題なく正解にたどり着けると思います。
コメント