復習
前回の記事でもお伝えしたとおり、保育士試験では音程についての理解がないと答えられない問題が出題されています。具体的には、
園児が歌いづらそうにしているため、短3度下に移調して弾くことにした、この時のこれらの音は鍵盤のどこを弾けばよいでしょうか?
こういった問題でしたね。音楽編3-1では、音程の度数について解説しました。度数に関してはみなさんご理解いただけていると思います。わからないよーという方は、前回の記事も読んでみてくださいね。
長短の理解
音程は数字で何度と表すということでしたが、確かにその通りなのです。しかし、音程は数字だけで表されるわけではありません。冒頭でもでてきた「短3度」のように、数字の前に何かが付きます。とりあえず付くものを羅列してみます。「長」、「短」、「完全」、「増」、「減」、「重増」、「重減」。全部で7つですね。厳密に言うと重重減とかもあるようですが、ほぼ使いません。いきなり7つも出てきて、とてもややこしいと感じられると思います。正直筆者もうなってしまいそうなくらい面倒くさそうな内容だと思っています。ただ、7つもあるけれど、長、短、完全がほとんどだと思って頂いても大丈夫なのではないかと思います。ただ、理論上は存在しているものなので、理解している方が良いでしょう。
長短と完全
この長短と完全は、度数によってそもそも分かれます。どういうことかというと、長短系の度数と、完全系の度数があるということです。もっと具体的に言うと、1度、4度、5度が完全系で、2度、3度、6度、7度が長短系です。この説明だとちんぷんかんぷんかもしれません。理論的に説明すると、完全協和音程と不完全協和音程、不協和音程で分かれている……という説明があるのですが、そこまでの理解は保育士試験には必要ないと思っています。もしかしたら、別の記事に詳しく書くかもしれません。
ここでも図を書いてみると覚えやすいかと思います。この図には増や減、重増、重減もでてきますが、とりあえず図を見てみましょう。
右に行くほど音程の幅が大きくなります。左に行くほど音程の幅が小さくなります。この説明でもよくわからないと思います。
ここで、のちのちの理解のために、暗記してしまったほうがいいものがあります。それは、「ド」を基準にした時の音程です。1度から順番に考えて行こうと思ったのですが、少し複雑ですので同じ完全系の4度から見ていきましょう。鍵盤と楽譜を読み取れるように頑張りましょう。
4度
4度の基本は完全4度です。完全4度音程は、ドとファの関係です。まずは楽譜から。
ド、レ、ミ、ファと数えて4つですので、4度ですね。そして次に鍵盤を見てみます。半音や全音の数を数えるというやり方もあるのですが、筆者の場合、ドを1と数えて、ド#を2、レを3というように数えて目的の音まで数えます。
上記の説明通りに数を数えると、ドからファまで、6となります。ド=1、ド#=2、レ=3、レ#=4、ミ=5、ファ=6という具合です。楽譜上で4度のときに音をこのように鍵盤で数えて6個あったら、それは完全4度の音程です。単純にドとファの関係は完全4度というふうに覚えてもいいのですが、このように鍵盤の想像も頭の中でできていないといけません。なぜかというと、このあと出てくる増4度と減4度の理解が難しくなるからです。
それでは早速、増4度と減4度について見ていきましょう。まずは楽譜で増4度音程を、ドを基準としたときのものです。
度を考えるときにシャープなどの臨時記号は考えなくても問題ありません。つまり、このドとファ#はドとファの時と同じ、4度の音程ということになります。度については同じということが分かりました。しかし、実際はファにはシャープがついています。ここで考えなくてはいけないのが、鍵盤上で何個の音があるかということです。鍵盤を見てみましょう。
ドを1とした時にファ#は何個目の音でしょう。7個目ですね。音が7つあるということです。先ほどの完全4度(ドーファ)では6個でした。そして、ドーファ#の音程では7つです。このように、音が一つ増え、距離が伸びると、それは増という言葉を使い、増4度音程と呼ばれます。完全4度から、鍵盤の距離がひとつ伸びたものが増4度ということです。先ほどの図を見てもご理解いただけると思います。
完全系の音の距離が伸びると、増音程になるということが図を見てもわかります。右に行くほど距離が伸び、左に行くほど距離が狭まります。
では、次に減4度を見てみましょう。勘の鋭い方ならすでに想像ができているとは思います。
ドとファ♭(ミ)の関係です。
まずは、フラットを考えずに度を見ていきましょう。この場合ドーファとなるため、ド、レ、ミ、ファですからまた4度ですね。
それでは鍵盤を見てみましょう。
ドを1と数えると、ファ♭(ミ)まで5個の音がありますね。元の完全4度のドーファは6個でしたから、1つ距離が短くなっています。こういった時に、減4度と呼ばれる音程になります。
ここでひとつ確認しておきたいことがあります。ファ♭についてです。昔の私がそうだったのですが、シャープやフラットって黒鍵のことじゃないの? ということです。黒鍵だからシャープやフラットというわけではありません。半音上がるか、下がるかということですので、ここで確認しておきましょう。とは言っても、ファ♭ってミじゃないかと鍵盤を見て思われた方も多くいると思います。実際鳴っている音や鍵盤を押すところは、ファ♭もミも同じです。しかし、音楽には調があります(ハ長調とかホ短調とか)。この調については、また後日詳しく解説しますが、その調の影響でファ♭と表記するほうが望ましい場面が出てくることがあります(あまりないとはおもうのですが)。そして鍵盤上は、ドを基準とした場合の減4度と、このあと見ていく長3度は、鳴っている音と鍵盤上の音は同じです。同じなのに名前が違うのです。こういったことがあるため、楽譜と鍵盤上の音の両方の理解が、音程を考えるときに必要なのです。少し、込み入った話になってしまいましたので中々理解が難しいのではないかとも思います。とりあえず、楽譜から度数を読み取る、そして鍵盤上の音の数を数えるという方法で、出題される音程問題については答えられるようになるはずですので、根気強く見ていきましょう。
つづいては、長短の音程から3度について見ていきたいと思います。
3度
3度については、長3度を基本として覚えておくと良いでしょう。ドーミの関係です。
ド、レ、ミの3つの音がありますので、3度ですね。続きまして鍵盤を見てみましょう。
ドからミまで、ドを1とすると、ミまで5個の音があります。楽譜を見て3度で、そのとき中に5個の音があるとき、それは長3度音程です。
鍵盤だけみると、先ほどの減4度と長3度が全く一緒ということがご理解いただけたと思います。ただ、楽譜上では、減4度ではドーファ、長3度ではドーミです。鳴っている音、鍵盤を押す場所は一緒なのに、名前と楽譜は違うということです。非常に面倒くさく、理解し辛い内容なのではないかと思います。ただ、じっくりと考えれば理解できる内容ですので、マスターしましょうね。
つづいては半音距離を短くした、短3度について見てみましょう。
まずは楽譜からです。
まずはフラットをとりはずして考えます。そうすると、ドーミの関係です。3度の音程ですね。このまま鍵盤を見てみます。
ドを1としたとき、ミ♭まで4個の音ですね。長3度の時は5個でしたから、それよりも半音分(鍵盤1つ分)距離が短くなっています。3度で、中の音が4個のとき、短3度音程と呼ばれます。先ほどの長短や完全、増減の図も見て確認しましょう。
長短に関しては、完全とは違い、ワンクッションあるような感じですね。完全系の音程は、距離がひとつでも増えれば増音程、減れば減音程になっていました。長短に関しては、長のものが半音ん狭まれば短になり、さらに半音短くなれば減音程になります。
それでは、長3度を半音のばしてみましょう。
シャープは一度とりはずして考えます。やはり、ドーミですから、3度の音程ですね。続きまして鍵盤です。
ドを1と考えてミ#は6ですね。長3度では5でしたから、半音距離がのびて、増3度の音程になっています。長短、完全、増減の図でも見てみましょう。
長音程のものがひとつ距離が伸びると、増になっていますね。
まとめ
今回は4度と3度について見ていきました。とても複雑な内容になってしまったような気がします。ただ、じっくりと考えれば理解できますので、鍵盤や楽譜、長短完全増減の図などを見て、理解していきましょう。
とにかく、暗記してしまったほうがいいことは、
・完全4度と言われたときはドーファ
・長3度といわれたときはドーミ
この鍵盤が頭の中に思い浮かぶ状態が理想です。それぞれの度数の、ドを基準にしたときの音程を頭に思い浮かべられるようになれば、あとはそれを半音増やしたり減らしたりすることで、中の音の数を数えられるようになり、冒頭の保育士試験で出題されたような問題にも答えられるようになります。
次回からは、4度や3度以外の音程を見ていきましょう。今回学んだことが理解できていれば、すんなりと進むことができるでしょう。試験問題に答えられるようになるのも後一歩です!
楽典の本が1冊でもあると安心ですよ。筆者も高校生の頃にこの本で勉強した記憶があります。
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